==レビュー(作家名敬称略)=======================================
eiki(f7)【記憶違い】
一枚絵の中に”間”や物語、独特の世界観をぎゅっと詰め込んだイラストを多数描いておられるeikiさんの描く、絶対的な29年という時間と向き合う阿求のお話。
短い作品だしここであまり内容については書くべきではないと思うので控えるけれど、テーマに対する掘り下げ、切り取り方をみて『この企画たててよかった…!』と思える。一コマ一コマのイラストの味わいについては言うに及ばず、言葉のチョイスや展開にストーリーテラーとしてのeiki(f7)さんのハイレベルっぷりを堪能できる快作です。
nukillizo【願】
見開きいっぱいにマーブリングによって描かれた、筆をもった5人の阿求。皆ダイナミックに踊っているような、しんみりと泣いているような、悪戯っぽく笑っているような不思議な一枚ながら、そのタイトルと相まって神聖な儀式を連想させる。ゆがみながらも鮮やかなその指が、筆が、睫毛が、頭に咲き誇るその花が見飽きることなくどっぷり浸れる一枚。
以前もどこかで描いたかもしれないけれどnukillizoさんのマーブリング作品はテーマと作品を通じて読み手・受け取り手がそのテーマについてどう考えるかを見つめなおさせる鏡のような一面を持っていると思っていて、本作を目にした自分以外の人はどんなことを感じたのかすごく気になっています。
pentamania【来世ToDo】
小傘と阿求による喜劇。阿求の御阿礼の子として、そして幻想郷縁起執筆者としての一面とその幻想郷縁起によって割を食う小傘を組み合わせる発想にまず『よくぞやってくださった』と拍手。コメディタッチながらも二人の立場を浮き彫りにした姿がどこか悲しく、その悲しさが抗えない運命を思わせ、そして希望と表裏一体であることに気づかせられる。この組み合わせならではのいい話。
pentamaniaさんはこれまでも企画した合同誌で度々お世話になっているのですが、それまでのスタイリッシュでエッジの効いた作風から意表を突くこの一作に正直度肝を抜かれたし、pentamaniaさんのファンだって方はこの一本を読んだらもっとファンになると思う。
合間合間に挟まれた小ネタも秀逸で、幅広い楽しみ方が出来る一作。
青蛆【ひとのせい】
自分が合同誌企画する時、まずテーマがあって、『このテーマでこの人が作品を作ったらどんな素敵なものが読めるだろうか』というのがきてお願いする作家さんを決めるのだけれど、特に青蛆さんはナズかわ以外おそらく全部の自分の企画に寄稿してくださって、そのたびにお願いしてよかったと思える凄いものを描かれる作家さん。
野球でいうならバットをへし折る重たいストレートの様な、圧倒的な筆力で気高い阿求を描いてくださりました。
ネタバレとはまた別の意味でこの場で内容を語るのを控えたくなる。ただただ、夢を見る様に頁を捲って、身を心をゆだねるのが一番いい楽しみ方だと思う。裏切られることは決してないから。
安芸【ライフワーク】
29歳になった阿求の夢に霊夢を誘って段幕勝負するお話。
ごくごく個人的な思いこみなのだけれど、安芸さんは自分の描きたい(シリアスと表現するのはちょっと違う)真面目な話の作り方に向ける感覚にとても近く、そして自分よりも何枚も上手に描かれる作家さんだと思っているので、「自分が思うよい本を作りたい」と思ったときに安心してお願いできる。有難いことです。
実は前回の合同誌でも安芸さんの作品を今回のような位置づけでの掲載していたのでなるべく避けようとは心掛けたものの、結局今回もそういう形に落ち着いてしまった。いろんな要素があるとはいえ、やはり安芸さんが作品の中で『これを由とする』ととりあげて仕込んでいくセンスが抜群に良い。少なくとも自分の価値観総動員してそう断じる。
本誌の良さみを決定づける一作。
朝日【花に追い風】
29歳という年齢は決してもう"幼い"とはいえないけれど、この歳ならではの知見と阿求持ち前のバイタリティがはじける、知に魅せられた阿求の若々しさに満ちた一作。
働き盛りで伸び盛り。霊夢と会話している最中もまだまだ老け込むような歳ではないといわんばかりの強い意志が感じられる阿求の笑顔が、そして背中が物語る。そしてそんな彼女を眺める文とはたての眩しげな表情もまた異なる歳の重みを感じさせながらもやはりフレッシュなのがこの作品のすばらしいところ。
本当に描かれた阿求の表情が、そして背中がキラキラしていて、強く惹かれる。死を背負っている背中、そしてそれに立ち向かう背中。天狗も、霊夢も、そしてきっと本作の読者全員があの背中に『頑張れ』と祈りを載せたくなるような、そんな背中が印象的。
いくたたかのん【篝火の】
主に成年向け、あるいは一般向けでえっちで可愛らしい女の子と動物を描かれる(個人的に読み物からの造語で”愛で物”と呼んでる)ことで知られるたかのんさんは、一方でTwitterの呟きなどで伺える通り非常に知的でアツい方で、無礼を承知であえてそういうお話を読んでみたいと思い執筆をお願いしました。
モノクロ原稿にも関わらず静かで鮮やかで眩しくてお話も面白くてもうこんなの寄せられたら、もう。もう。本誌のテーマからしても絶対描かない訳にはいかない、だれも描かなかったら自分で描こうと決意していた阿求の猫の話がこういう形で寄せて頂けたことは本当にうれしかったし、だから合同誌つくるのやめられないんだよなーという、そういう一作の一つです。
ちなみに、表紙との関連性がありそうな一作ですが全くの偶然。
言い換えれば奇跡のそれです。
一笛【椿星回帰】
今回の企画を動かすとき、一番最初に決めていたことが一笛さんに表紙をお願いすることでした。一笛さんの絵は目にした人が描かれたものに思いを馳せさせる力に溢れていていつまでも見ていたくなるじゃないですか。
今回は自分の拙い要望をこれでもかというほど鮮やかに、阿求らしい生と死と知性と感性を詰め込んでいただきました。表紙の紙も今回の装画を見せていただいてから決めたのも、その印象を、この絵の素晴らしさをなるべく損なわずにそのまま伝えられたらいいな、と思ってのことでした。
形になって本を目にするたびに、改めて最高の仕事をしてくださったなぁと感謝してもし足りない一枚です。
うぶわらい【夜中のおとむらい考】
まず目に飛び込んでくるのが「九回死んだ者の特権」というパワーワード。この特権の持ち主たる阿求が夜中のおとむらいという怪談とそれにまつわる体験を語るのがこの小説。まずそういうお話を書こう、というアプローチの仕方からして痺れませんか。
その怪談と重なる体験をしたことをきっかけに、その怪談の結末として降りかかるであろう死を免れる為あの手この手を講じる阿求。日常からかけ離れたその様子の滑稽さを阿求自身が自覚しながら話を進める阿求の様子が読み手からするとやはり不謹慎ながら、彼女自身の生への執着や阿礼乙女としての貫禄を見せつける。
題材選びから作中の滑稽さと不気味さを同居させたその雰囲気、そして阿求をはじめとした登場人物たちの心の動きを粒立てて描くうぶわらいさんの技を堪能できる一本。
雲海【10956日】
印象的なタイトルと、それに負けない雲海さんの漫画巧者っぷりが堪能できる一作。
阿求と、それに対峙し聞き手となる神子の二人で小規模ながら、壮大なスケール感がある会話劇。二人らしいやり取りの言葉の選び方や描写の一つ一つが原作愛、そしてキャラクターの掘り下げっぷりを感じさせて読んでいて気持ちがいい。
人里における影響力の大きな二人の口から語られる繰り広げる人の定め、生まれる理由と死にたくない理由を通じてサヴァンな彼女らの人間らしい一面が切り取られ、それが平凡な自分と重なり合うような、通じ合うことが出来るような錯覚を覚える。
阿求の生への執着の理由もさることながら、それに向き合う相手に神子をチョイスしたのが本当にニクい。そしてお腹が減る。
お紙【ふたつめの難題】
動画「夜雀食堂」シリーズなどで人気を博しているお紙さんの描く、阿求と輝夜の壮大で静かな恋。
様々な組み合わせの妙が楽しめるのがこういうテーマの本のおもしろさの一つだと思っているのだけれど、そういう面で見るとこの二人の組み合わせでこの物語は誰かの手によって必ず生まれなければならなかったと思わせるほどの必然性と説得力、魅力がある。
そして、今回そんなすてきなお話の書き手にお紙さんという作家をチョイスした神様は中々ナイスな感性をもっている。
いいぞ、神。(”かみ”だけに)
おにぎり【進水式】
おにぎりさんのイラストはいつもどこか旅情があるような気がする。
可愛らしいふんわりした絵柄の中に惹きつける世界観があって、単なる好みだけでなく印刷された紙やディスプレイの向こう側に行ける事なら行きたいと思わせる引力があるのです。
そんなおにぎりさんの絵に感じてる個人的なツボをクリティカルにおさえてくださってるのが今回の作品。一枚絵だけを通じて作者が読者に正しいメッセージのやり取りは難しいけれど、だからこそそれを逆手にとっていくらでもドラマチックにできるし、それでもこのイラストを通じてのやりとりは決して悲しいだけじゃない、希望に満ちた船出を思い浮かべずにはいられない。
このテーマに即しながらもこんなに明るい一枚絵で作品名もこんなカッコいいのが来たら胸がいっぱいになるよ。
けんじ【HIEDA revolution】
ネタバレ有りと注意書きを添えて始まったこのコーナー。ここまで読み進めている方のうち、既に本誌を読んだ人と、読んでないけれどネタバレが平気な人の二種類に分けられると思うのだけれどもし未読の方がいたら是非本作は特にまっさらな気持ちで読んでほしい。
ネタバレされた上で目を通すことで作品自体の価値がおとしめられるわけではないけれど、出来る限り本誌をそのまま読み進めて、けんじさんの作品に至り、そして登場キャラクターから展開まで読書体験として楽しんでもらいたい。
その方が、きっとこの阿求が楽しめるし、本誌の編集を担当した立場としてこれ以上この場で語るのはためらわれるし、そういう感情を抱いているということが一つ本作の魅力だと思ってもらえたら自分の感想として伝わるんじゃないかと。
寂びたれ【アイコタヘル】
阿求と霖之介の、人であり人ならざる二人の恋物語。
この二人ならではの趣深い”大人”な駆け引きと、寂びたれさんの描く美しい絵が相まってキュン死。キュン死ものです。ええ。
その物語や構成の妙はもちろん、すべてのコマが一枚のイラストとして素敵でイラストレーターとしての寂びたれさんの魅力を堪能できる一作。印象的なのは、独特の描線とトーン使いで描かれる光の表現で、作中で阿求が一つ一つの向き合う本や人、想いがまるで宝物のように輝いていているようにもみえる素敵な作品。
ちなみにTwitterで公開した本誌PVもこの寂びたれさんの手によるものなのです。未視聴の方は是非是非。
獅子山レオ彦【七人の霊夢】
想定以上に長生きした阿求と、幻想郷に起きた異変にまつわる小説。
例えば、本誌を音楽アルバムのCDとするならシングルカットされてた作品はどれか、という事で考えるとまずこの七人の霊夢が挙がるのでは、と思う。それほど、今回のテーマに即した寄稿作品としての良さだけでなく、一つの二次創作として、短編小説として面白く、際立った作品だと思う。
人と妖怪それぞれのエゴが、願いが、言いようのない心の在りようの描写が非常に好みだし、お誘いした本人がこういう事書くのも偏に主催の力不足で心苦しい限りなのだけれど本誌の収録作の一つ、という扱いに収まるのがもったいないと思うほど。正直掲載順にも非常に悩んだ一作で、願わくばより一層人目に触れて欲しい。『これはすごい』ってもっと言われなきゃいけないと思う一作。
じる【急に参るは遠すぎる】
人の一生というものを評価するなら、自己採点と他者採点の二通りある。
本作はそんな”評価”に対する阿求の見解をテーマに取り上げているように感じた一作。
多くの人は自らの一生に自己採点を下すならあくまで現時点のものである旨が脚注として入るけれど、こと阿求においてはもうほぼゴールが明らかになっている上に、先祖の人生の記憶(程度の差こそあれ)と記録から他者採点ができる上に自己採点も既に何度か経験済み。
そんな彼女が自らの人生をどう評価し、そしてそんな彼女を周りはどう評しているのかが描かれた、ささやかで確かな感動作。
たけしば【夜の果てへの旅支度】
自分が企画する合同では常連のおひとりであり、毎回ウィットに富んだクレイジーなギャグ漫画を描くたけしば先生。多作な彼の作品の中でも、今回は異質、あるいは新境地と言える一作。
今作の内容は、射命丸の依頼で阿求が小説を執筆するお話。
執筆をすすめる中で阿求の生、射命丸の美意識、そして世の世知辛さを描く大真面目な物語をいつものたけしばアレンジによってお腹をかかえて笑える一作に仕上げている。一こま一こまの枠を越え原稿一枚全体に及ぶ書き込みが施されたページが多いのも特徴で、ますます表現力豊かになったたけしばワールドの今後にさらなる期待。
留吉【百年後の君へ】
阿求と、阿求に友人らしい距離感で寄り添う小鈴のお話。
この特異なテーマの合同誌で一本話を作るに当たって、独自のアレンジを施したり特殊なシチュエーション、あるいは大きなイベントを切り取り作品に仕上げていく作家さんもいる中で、素の二人をそのまま描いた一作。
多くを語らない阿求と、雄弁な小鈴。阿求が何かを声高に叫ばない事で、それが却って読者には雄弁に映り、またそれを包み込む小鈴のやさしさが染みたのでは。二人の関係性、というシンプルな素材を使って腕利きのシェフが一皿仕上げたらどうなるか、というその匠っぷりを見せつけられるような一作。
のん【桜の下のご挨拶】
強くて自然体な阿求を描くのんさんの短編。桜の前でイワナガヒメ様に手を合わせる阿求が美しい。
掲載順の話をすると、こののんさんの作品からエピローグにちかい位置づけで作品を配置しています。そこから最後までは駆け足で読んで欲しいな、って願いがわいたのも、この作品をお預かり・拝読したときの感情で、企画した人間が逆にコントロールされた、気持ちよく踊ろうと腹を決めることになった一作。
作品としての確かさは言うに及ばずなわけですが、合同誌の寄稿作として何かつくるにあたりこう言ったアプローチで描けるのんさんは本当に必殺仕事人。
葉月梗【宵に酔いて】
阿求と妹紅の満月の夜お酒を片手に花咲く会話劇。
作中では短命と不死というこの二人の身の上の違いが切なく描かれている一作で、会話の中でそうした身の上の違いがこの二人の決定づける違いのように感じさせながらも、よくよくそぎ落としていくと結局は人の形のその中、他の誰でもないその人たらしめる価値観の大切さが浮き彫りになる。
個人的なポイントは縁側に腰掛けている二人の座高の差。おそらく意図されてるそれを長らく阿求を描かれている葉月さんが紙に落とし込んで見せてくださったというのがもう感動しちゃうよね。
フジノキ【墨に幽けし】
本誌のテーマ『29歳の阿求』で本を作るとしたら、必ず押さえておかなきゃいけないポイントっていくつかあると思っていて、自分の思うそれをアルペンスキーの選手のように一作で鮮やかに全部網羅してるのがこのフジノキさんの墨に幽けし。
フジノキさんの絵柄はシリアスもギャグもほのぼのもセクシーも全部できる、どんな攻撃も鮮やかにいなす達人の構えみたいなところがあって凄いなーと思ってるんです(語彙死)がそういう作家さんだから描ける話だなぁと。
本誌の背骨、特に首回りの様な位置づけにあたる作品。
阿求も登場する小鈴も年齢相応のアラサーらしいルックスなのもgood。
保冷剤【阿求さんと顔のない亡霊たち】
合同誌企画者の喜びあるあるの中の一つに『こんな良いの書いてこられたら直してくださいなんて言えないじゃん…!』というのがある(自社調べ)のだけれど、毎回その思いをさせてくださるのがこの保冷剤さん。
スターバックスで朝コーヒーとしゃれこむ阿求から始まるこのお話は、彼女を巻き込んでの銃撃戦、そしてタイトルにある”亡霊”にまつわるミステリーで繰り広げられる娯楽作品で、ある人はゲラゲラ笑うだろうし、ある人は涙で胸を詰まらせるだろうし、ある人は過去作と照らし合わせて考察を進めるだろうし、ある人はそれ全部噛み締めて楽しむんだろうなぁと思える。
勿論単独でも面白いし、興味があれば保冷剤さんが所属しているサークル太田ユリのページやそそわにて関連する過去作が読めたりするので是非是非。
マムドルチァ【忘れないために】
今回は本誌小説勢がダイナミックだったりドラマチックだったり、強いインパクトのある話が多い中で際だつように地味で、そして美しい阿求の一日を描いた走馬灯の中にちらっとよぎるような、そんな一幕をにぎやかに胸暖まるように切り取られた本作。
マムドルチァさんの持ち味(だと勝手に思っている)キャラクター間の軽妙なトークが今回も光る。29歳の彼女の目に映る、過去から経た年の分相応に変化を遂げながらも変わらず美しい段幕が飛び交う、時々不思議でやっかいな幻想郷。
芝生に腰を降ろそうと地面についた手のそのすぐ脇に蝉の抜け殻が落ちていていることに気づきそれをまじまじと見つめていた時の様な、形容し難いけれど心地よい読書体験をもたらしてくれる、愛すべき物語。
マルケー【ほにゃらら流星群】
今回本誌のテーマで一冊形にするにあたり自分の中でもどういうアプローチの作品が集まるかな、こういう話は載せたいな、と立場上色々思いをはせるわけで、それも人を巻き込むずっと前からこのテーマを通じての表現って色々頭にあったつもりだったのですが全く想定していなかった切り口で描かれていたのがこの作品。それも2Pという短いながらまるで居合い抜きの達人による一太刀のようにざっくりと心を奪われてしまうという。
このレビュー内では作品内容自体にはふれないのですが、マルケーさんのあとがき含めて作品のとらえ方で自分の中に一本筋が通ったあの時に想いを馳せてはその体験を求めて再読し、楽しめちゃう怪作です、とだけ。
あと個人的にマルケーさんの手のかき方がめっちゃ好きです。
柳太【セカンドライフあるいは】
もうこのタイトルだけで痺れませんか。”あるいは”を付けるこの柳太さんのセンス。
内容も素晴らしくて、雑談の中で人生観、役割について話す阿求の言葉に文が耳を傾けるのだけれどこのやり取りの中で阿求の価値観を選択していくアプローチ、そしてその漫画としての見せ方が非常に魅力的。聞き手にこういうやり取り上手の文を選んだことで、零せること、引き出せる側面があって上手いなあと感じる。
作中で描かれる新聞やちょっとした一コマの遊び心や書き込みも良い。個人的な描写フェチの話をするなら作中の障子に和紙テクスチャを薄ーく張ってる所がたまらないです。
ゆめつきてのん【金木犀のお庭】
徹頭徹尾、尊い友愛と切なさで満ち満ちたあきゅすず。
阿求と小鈴の二人、年齢を重ねるにつれて友情やそこに載せた想いや役割の変遷を描く一作。実際にアラサー以上の人間なら痛いほど胸を締め付けられるのでは。
特にみて欲しいのはほぼ全てコマを通じて描かれる阿求の心の動きと、それを想起させるゆめつきさんのアプローチ。本当に細かく、苦しさもどかしさ切なさ、そしてそんな感情を抱いてしまう自らへの葛藤が描かれつつもその描き方が阿求に寄り添うようで優しさも感じる。
金木犀の花言葉は色々あるけど、本作には個人的に『初恋』、そして『気高き人』を選びたい。
きぃ(小説組版・データ作成)
作家さんではないものの今回もサークル【unlockerfield】のきぃさんに小説の組版、ならびにデータ面で多大なアドバイスと助力をいただいてます。
素敵な小説を寄せていただいたのに、読みにくさゆえに敬遠されてはもったいないし、企画者としても不本意な思いをするだけに、本誌のクオリティにおける貢献度は計り知れません。
毎度ダメダメな企画者にもかかわらず無事イベントに本が間に合ったのは、きぃさんの力をおいて他にないです。本当にありがとうございました。
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そんなわけで、主催レビューでした。
この本にこれだけ素敵な作品を掲載して作らせてもらえたのが本当に幸せだし、恵まれているなぁ、と思ってます。
自作(Alive Quest 29)について少し書くと、同作の最後の一頁を書くための一作でした。
素敵な話が多いので、そういう作品がより魅力的に見える様に自分は思い切って『この本はこういう本じゃないんですよ、覆されていきますよ、そういう本ですよ、お楽しみに』という前振りに全力を傾けたつもりです。
どこまで功を奏したかはわかりませんが、少しでも寄稿作品を輝かすことが出来たら、そしてそういった素敵な作品群を通じて本として込めた想いとかが伝わればいいなと思うのです。
自分の作品じゃなくて人様の作品でそういうことをすることの是非もあるかとは思うのだけれど、色んな人に、それも自分よりずっと出来る人たちに助けてもらった上で今出来る全てです。
アイディアは授かりもの。それを形にするのには技術も手間も時間も必要で、それをこういう風に共有するために多くの人の手を借りました。
作家さんはもちろん、手に取って時間をかけて読み進めてくださった読者さんなくして今回やりたかったことはかないませんでした。
本誌に関わってくださった全ての人に感謝します。
ありがとうございました。
東方を知った時にはまだ大学生だった自分も既に立派なアラサー。
もう今回ほどの規模の本を作る気力も時間もそうないはず。
そんな中でも経験を活かして次の本にまた向かっていけたらいいな、と思うのです。
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